街ドキ 33号
新井 重治 飯能市長

飯能生まれの飯能育ち、2021年に市長に就任した新井重治市長。
「市民の暮らしを守りたい」との想いを胸に、故郷のために力を尽くしてきた。
これからの飯能市をどのように描き、未来に引き継いでいくのか。
市政の舵取りと市民への想いを聞いた。
都心とつながり、
自然と過ごす
心にゆとり 飯能暮らし
自然に囲まれたまちは、 都会から離れていると思われがちだ。
けれど飯能市は、都心とつながりながら、 日常のすぐそばに山や川がある。
観光で訪れるだけでは見えてこない、 暮らす場所としての心地よさ。
そんな飯能らしさを、 住む人の目線で見つめてみた。
- 対話重視のまちづくり
私は1972年に飯能市役所に入庁し、42年間インフラ整備や防災の現場に携わってきました。退職後は副市長として市長を補佐し、市政全般を見渡す立場から、これからの飯能市のあり方について考えてきました。
副市長退任後も「飯能市のためにまだできることがあるのではないか」という思いが残っていました。行政に携わりたいという気持ちが、胸の中にずっとあったのです。
そこで市議会議員選挙に立候補しました。ただ、1期4年間、議員として活動する中で実感したのは、思い描いていた仕事をする難しさです。私は理想としていたのは、計画段階から市民との対話を重視するまちづくり。しかし、市議会議員の役割は、市が抱える問題に対して行政の対応を問うことで、すでに進行中の計画について進め方や課題をチェックすることが中心でした。
私がめざす対話重視のまちづくりを進めるには、行政組織のトップでなければならない、そう考え、市長をめざす決意をしたのです。
- 市民の暮らしを守る
市職員時代は、土木、建設、都市計画に関わる部署で防災やインフラ整備などに携わってきました。川が氾濫した、山が崩れた、道路が冠水したなど、災害が発生したときには、平日、休日、昼夜を問わず、真っ先に現場へ駆け付けます。到着後は速やかに状況を把握し、何をなすべきかを具体化する。早急に対応策を固め、住民の不安を取り除く。市民の暮らしを守ることを何より大切にしてきました。ここに私の政治家としての原点があります。
先ほど述べた私の政治信条である「対話重視のまちづくり」も、職員時代の経験に基づいています。
公共事業において、多くの時間を要するのが用地の取得です。地権者との交渉や対話は、一朝一夕にまとまるものではありません。工事を始めてから「こんなはずではなかった」という事態にならないよう、計画の段階から膝を突き合わせ、話し合っていく必要があります。言いうらいことも伝え合い、お互いに納得した上で前に進めていく。公共事業で最も大切な姿勢といえます。
このような対話の積み重ねは、市長として市民の皆さんと信頼関係を築いていく上でも、欠かせないものと考えています。
- 今を生きる世代の責任
近年、社会インフラの安全性が従来にも増して注目されています。全国では、老朽化に起因する重大な事故も発生しており、適切な整備や維持補修が欠かせないとあらためて痛感しています。市民の不安を払拭するためにも、優先的に取り組まなければならない課題です。
もちろん財政力が十分にあるわけではありません。しかし、財源がないからできない、と結論づけるべきではありません。国の補助制度なども有効に活用し、緊急性の高いものから順次取り組むことで、市民の安心・安全につなげていきたいと考えています。
飯能市は、市域のおよそ75%を山林が占めています。豊かな自然を守りながら、暮らしやすい都市として発展できるよう力を尽くす。将来を見据えたまちづくりは、今を生きる世代の責任だと考えています。
- 飯能で始める“農のある暮らし”
まちづくりにおける飯能市の特徴的な施策の一つが、「農のある暮らし・飯能住まい」制度です。
都市計画区域には、市街化区域と市街化調整区域があります。後者は本来、市街化を抑制するためのエリアです。この制度は、そうした地域にある農地を有効活用し、農地付き住宅などとして土地利用を進めることで、非東京方面からの移住促進を図るものです。
飯能駅から池袋駅までは、特急で約40分、急行でも約50分。都内で働きながら、週末は自宅の畑で野菜を育て、豊かな自然に囲まれて家族と過ごす。飯能なら、そんな暮らしを叶えられることができます。
制度の対象区域は、飯能市街地の南西に位置する中山間地、南高麗地区です。2026年4月1日までに77世帯243名が、この制度を利用して飯能での暮らしを始めました。移住してきたご家族の多くは、自然豊かな環境での暮らしや子育てに魅力を感じた方々です。新しい生活にもすんなりとなじみ、中には地域でリーダー的な役割を担っている方もいます。
- 駅から2kmで豊かな自然
子どもの頃は、夏休みに入ると毎日のように川遊びに夢中になっていました。現在の公園にあるようなブランコや滑り台、砂場などはありません。石投げをしたり、生き物を探したり。あるもので自由に遊ぶ。ルールはなく、かといって争いもない。毎日が本当に楽しかったです。
そんな自然は、現在の飯能にも、しっかり残っています。飯能駅から徒歩2km圏内に、水の流れが穏やかでアウトドアを満喫できる「飯能河原」、新緑や紅葉が楽しめる「天覧山」などがあり、市街地のすぐ近くで豊かな自然に親しむことができます。
市長に就任し、ありがたいことに2期目を迎えることができました。これからも飯能ならではの自然環境を生かしたまちづくりに力を注いでいきます。都心に通勤・通学しながら、休日は家族と自然に囲まれて過ごす。少し身をリフレッシュする。そんなゆとりのある暮らしを、多くの方に飯能で実現していただきたいと思っています。
プロフィール
新井重治 Arai Shigeharu
埼玉県飯能市出身。高校(土木科)卒業後、1972年、飯能市役所に入庁。都市計画課長、道路課長、建設部長などを歴任。退職後、副市長を1年務め、2017年に飯能市議会議員に当選。1期4年を務めた後、2021年に飯能市長選に出馬し、当選。2025年に再選。

